スイートネットワーク海外支部"プリン"が世界中のいろんな場所で出会った甘い(時にはビターな)お話をお届けします。


by pudding-world

田舎暮らしの楽しみ ~南仏プロヴァンスの休日~

例年にない真夏日に驚かされたかと思うと、いきなり秋が来たかのように肌寒い今日この頃。
気まぐれなお天気が続くヨーロッパですが、ヴァカンスシーズンはまだまだ終わりません。
ヨーロッパで人気のヴァカンス地はたくさんあれど、フランス人が好きなヴァカンス先の定番といえば、なんといっても南仏プロヴァンス!
古くからフランスでは心の故郷のような存在だったプロヴァンスですが、1989年に出版されたピーター・メイル著「南仏プロヴァンスの12ヶ月」が一大ブームを巻き起こしたのをきっかけに、世界的な知名度が一気に高まりました。
私がプロヴァンスという言葉を初めて目にしたのもこの本だったと記憶しています。

初めて訪れたプロヴァンスは、本から空想していた何倍もすばらしかった!
あんまり思い入れが強すぎてとても文章にできそうにない・・と延ばし延ばしにしていたのですが、これから少しずつ書いていこうと思います。
とはいえ、やっぱりプロヴァンスのすばらしさは私なんかの力ではとても表現しきれないと思いますので、実際はこの何倍も素敵なところだ!と思って読んでいただければ幸いです。

最初はあれも見たいここも行きたいといっぱいいっぱいだった私ですが、何度か休暇を過ごすうちにだんだんと免疫ができて、最近やっと「何もしない休日」を楽しめるようになってきました。
プロヴァンスは急ぎ足で観光するより、土地の人にならって"自然時計"に沿ってのんびりと日常生活を過ごすほうが、うんとたくさんの発見があるようです。

b0126715_1375466.jpg

我が家がいつも滞在するのは、プロヴァンスのなかでも田舎の風情を残したリュベロン地方。
アヴィニョンの東方、なだらかな山地に丘と平野が続くリュベロン地方は、自然公園に指定されているため、昔ながらののどかな田園風景が広がっています。
この辺りには大資本系チェーンホテルは無いかわりに、素敵なシャンブル・ドット(B&B)がたくさんあります。
ガイドブックやおしゃれ雑誌で紹介されるのは、たいがい他所から移り住んだオーナーが経営しているところで、洗練されているかわりに目の玉が飛び出るくらいのお値段だったりしますが、地元の人がやっているチャーミングでお値段もうんと安いシャンブル・ドットがたくさんあるのです。
なにより、古い民家で土地の人たちとふれ合うことができるし、本物の田舎暮らしを楽しめるのは魅力的です。

b0126715_0435538.jpg
           ボニュー村のはずれ、森と畑に囲まれたシャンブル・ドット。

b0126715_045896.jpg
         自然の中でいただく朝ごはんで気持ちいい一日が始まります。


小人数や短い滞在ならシャンブル・ドットも素敵ですが、ヨーロッパの田舎では1週間単位で借りられるレンタルハウスがたくさんあって、家族や友人数人ならホテルやシャンブル・ドットに泊まるよりもだんぜんお得。
家具やキッチン用品もすべて揃っているので、暮らすように楽しむことができます。

ある夏、私たちは、メネルブ村のはずれに建つ家を借りました。
このあたりはかつてピーター・メイル氏も住んでいたところで、本で読んだ世界そのままの、自然以外に何もないほんものの田舎。
住所もない畑道の中にその家があらわれた時には、家族全員から「うわあ~!」と歓声が上がりました。

b0126715_0521256.jpg
古い農家を改造したというがっしりとした石造りの家。
家の裏山にはオリーブの木とぶどう畑が広がっていました。
b0126715_2015100.jpg

b0126715_0534035.jpg
テーブルの上には、近くで農業を営む大家さんからのプレゼントが。
裏の畑で採ったばかりのみずみずしくて甘いぶどうと、自家製のワイン、そしてコンフィチュールです。
心のこもった贈り物に、一同またもや感動。


歩いてすぐの大家さんのおうちではターブル・ドット(夕食)もできるというので、喜んで伺いました。
b0126715_14966.jpg
南仏ではこれがなきゃ始まらない、パスティス(アニスのリキュール)で乾杯。なんと自家製!

「料理はすべて母に教わった味」という奥さんがつくってくれたのは、地元で採れた(中には自分で育てた)新鮮な素材を使った南仏の家庭料理の数々で、どれもしみじみとおいしかったです。
南仏の強い太陽をいっぱい浴びて育った野菜のおいしさは、じんわり体に染み入るよう。
自家製の野菜に自家製のワイン・・・丹精こめて作られた作物をおいしくいただける幸せを噛みしめました。
b0126715_164420.jpg
       ニース出身という奥さんの故郷の味、アンチョビと玉ねぎのピサ・ラディエール。

b0126715_111096.jpg
              ナスにパプリカ、南仏の野菜たっぷりの前菜。

b0126715_1121842.jpg
             挽き肉とチーズのオーブン焼きと、トマトのグリル。

b0126715_1141365.jpg
      ふんわり優しい味でいくらでも食べられそうなくらいおいしかった!洋梨のタルト。

おいしいお料理をいただきながらワインもどんどん空いて、おしゃべりも弾みます。
プロヴァンス訛りで身振り手振りをまじえて話すご主人はまさにこの土地の農夫!といった感じ。
畑でつくっているアスパラガスやさくらんぼのこと、観光客がいない美しい穴場、地元の人が行くおいしいお店、かつて村を訪れていたというピカソの内緒話まで。おもしろい話が次々と出てきて大いに盛り上がりました。

昔のメネルブの写真も興味深く見せていただきました。
リュベロンは自然公園に指定されているので開発の手は入らず、景観は守られているのですが、やはりプロヴァンスブームによって、驚くほど変わったといいます。
それは土地の人々にとってどうだったのだろう、と気になっていたことを聞いてみると……
良いことも悪いこともある、と複雑な様子でした。
何もない田舎の村に急に観光客がドッと押し寄せるようになり、富裕層が競って別荘を買い、移住者がどんどん増えた……そうすると自然にビジネスが生まれます。
リュベロンの村々では、こんな田舎町にあるとは思えないようなおしゃれなお店やレストラン、そして不動産屋さんの多さに驚かされます。
当然のごとく、地価は何倍にも何十倍にも跳ね上がり、土地や家屋を手放す人も増えたそうです。
ご主人は、「その恩恵を受けて暮らしが楽になったのも事実だけど、私らの子どもの世代ではとてもこの土地で家を持つことができなくなって、みんなよその町で暮らしてるんだよ。」と寂しそうにおっしゃっていました。
私も観光客の一人として、考えさせられるお話でした。


次回からはこのメネルブの家を拠点に、リュベロン地方にきらめく小さな村々をご紹介していきたいと思います。
[PR]
by pudding-world | 2010-08-18 23:16 | フランス