スイートネットワーク海外支部"プリン"が世界中のいろんな場所で出会った甘い(時にはビターな)お話をお届けします。


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カカオ豆からチョコレート作りを体験。「フェア」ということについて。/中米ニカラグア③

ニカラグアの古都グラナダで、チョコレート作りを体験しました。

*ニカラグアっていったいどこ?!と思った方、興味のある方はこちらをご覧ください。
初ラテンアメリカは甘くなかった……/中米ニカラグア①
めくるめくコントラストに翻弄されて/中米ニカラグア②

グラナダは、ニカラグアでは一番観光客が多い町と思われます。
色鮮やかな建物が並ぶ中心地には、観光客向けのホテル、飲食店、土産物屋などが集まっていて、他の町にくらべると格段に豊かな印象。
私たちが自由行動を許されたのは、唯一この町だけでした。

ニカラグアは良質なカカオ豆の産地。
そのカカオを使った伝統的なチョコレート作りを体験できる施設が、ここグラナダにあります。
受け身にならざるをえなかったニカラグア旅ですが、これだけはぜひとも体験したかったこと。
念願叶って体験することができました。
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「Choco Museo (チョコの博物館)」というその施設。
たくさんのパネルが展示されていて、カカオの歴史、チョコレート作りの過程、ニカラグアのカカオ栽培やカカオを取り巻く世界の現状まで、興味深い話が分かりやすく説明されています。

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気持ちいい中庭には、チョコレートドリンクやスイーツがいただけるカフェが。

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宿泊施設もあるので、朝食ビュッフェも充実しています。
ニカラグアの豆ごはん「ガジョピント」に揚げバナナ、スイーツなどなど、バナナの皮にのってとってもおいしそう。

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カカオ豆や手作りのチョコレートも販売しています。
石臼を使った伝統的な製法で作られるとあって、ざらっとした独特の食感です。
環境に配慮したビオのカカオ使用で、パッケージには色鮮やかな鳥のマークが。

扱っているカカオは、ニカラグア北部にあるカカオ協同組合のビオのカカオ豆。
ここで知って驚いたのですが、この組合は、ドイツのチョコレートメーカー「リッタースポーツ」の協力で始まったプロジェクトだそうです。
リッターは、最近ビオ商品に力を入れてがんばってるなあと思っていましたが、まさかここでそのカカオに出会えるなんて嬉しい偶然!
リッター社のオーナー、アルフレッド・テオドア・リッター氏は、環境問題・社会問題への意識が高く、数々のエコでフェアなプロジェクトに取り組んでおられる方です。

さて、いよいよチョコレート作り。
アメリカからの旅行者も参加して、総勢6名のグループでスタート!
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マヤ式の伝統的な製法は、生のカカオ豆を焙煎するところから始まります。
コマルと呼ばれる鍋で、じっくり低温焙煎。
焙煎が終わったら、まだ熱いうちに一粒ずつ皮をむきます。
炒りたてのカカオはびっくりするほど香りが豊かで、そのまま食べてもおいしい!
皮は煮出して、カカオ茶にしていただきます。(これも美味)

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お次は磨砕。
機械は使わず、石臼ですり潰していきます。これがなかなか大変。
カカオ豆がパウダー状になった後、さらにペースト状になって油分が出てくるまで、すってすってすり続けます。

ここで一旦休憩して、できたカカオペースト(カカオマス)を使ってカカオドリンク作り。
もともとチョコレートを作って食べる習慣のないニカラグアでは、「カカオ」というと普通は飲み物のことなんです。
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水や砂糖を加えてかき混ぜます。泡がたつほど思いっきりかき混ぜるのがいいのだそう。
ニカラグア風(シナモン入り)、アステカ風(チリ入り)、スペイン風(ミルク入り)の3種を試飲しました。
私はスぺイン風が好みかな。

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チョコレート作りに戻って、お次はコンチング(精錬)。この過程だけ機械を使います。
一般の工場製品だとここでカカオバターを加えたりしてなめらかにしますが、こちらではそのまま。

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最後は型に流してトッピング。
ニカラグア産コーヒー豆やナッツ、ラム酒、生バナナ(!)などの素材を組み合わせてトッピングしていきます。
コーヒーやナッツは想像がつきますが、生のバナナ入りチョコレートは驚愕の美味しさ!
ちょっとザラッとしたカカオの食感が残って、ワイルド風味なチョコレートができあがりました。
見た目もかなりワイルドですね(笑)

ニカラグアはカカオの産地なのにチョコレートが売ってないのが不思議だった、という話を以前しましたが、じつはニカラグアにも有名なチョコレートがあります。
ニカラグアの火山の名前が付いた「MOMOTOMBO モモトンボ」というチョコレートメーカー。
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空港にあるショップが、思いのほかモダンで洗練されていてびっくり。
それまでに見たニカラグアの風景とのあまりのギャップに戸惑うほど。
この国の物価からしたら考えられない高級品ゆえ、ほんの一部の富裕層と外国人しか買うことはできないと思われます。
そもそもニカラグアの人たちはチョコレートを食べる習慣が無いそうなので、外国人のために作られているのでしょうか。
とくにアメリカでは、数々の賞に輝くなど評判のようです。
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アーモンド、ココナツ、コーヒー豆などなど、ニカラグア産の素材を使ったチョコレート。
素朴さを残しつつも、なめらかな口どけにカカオの質の高さが感じられます。

ニカラグアの旅はいろんな意味で大変でしたが、とても興味深い体験でした。
ふだん何気なく食べているチョコレート。その材料となるカカオ豆が、こんなに遠い、最貧国といわれる国で作られているということをあらためて実感。
商品の出所について(フェアかどうか)はいつも意識していたいと思っていますが、やはり実際に生産地を見ると、まだまだ、という感じがします。


「フェア」ということについて。

以前、チョコレートに関する興味深いドキュメンタリー番組を見ました。
ドイツの国営放送ARDの番組で、あらゆる企業(巨大スーパーにアパレル、保険会社まで様々)をチェックするというその名も「Check」という番組。
いろんな項目(品質、価格、公正さ等)に沿って、専門的な実験や調査などをして徹底的にチェックするのですが、完全に中立の立場で、企業名も人物も実名で登場するので信頼度は高いと思われます。

これまでにマクドナルドやH&Mなど世界の名だたる大企業が登場していますが、ある時、とある有名お菓子メーカーが登場しました。
世界中で商品を展開しているイタリアの企業です。ここでは仮にA社とします。
チョコレートやヘーゼルナッツを使った商品が有名で、番組の中では実際にA社で使うカカオやヘーゼルナッツの生産地(アフリカやトルコ)を取材しているのですが、そこではなんと子どもも朝から晩まで働かされていたのです。
農場の労働者たちとその家族は、野営場のような場所の粗末なテントで生活していました。
小さな子どもが泣きながらインタビューに答える映像が忘れられません。

データによると、A社は同業他社に比べ、桁違いの莫大な広告費を使っています。
たしかに、いろんな国際試合のスポンサーになっているし、スーパーでも同社の商品は一等地の大きなスペースに並んでいるし、テレビでは一日中ひっきりなしにCMが流れています(子ども向けにヘルシーさを売りにしている商品は、成分調査ではイメージとは随分違う結果でした)。

番組ではこの結果を受け、A社に直接取材に行っています。
A社の回答を簡単にまとめると、「契約では児童の労働を禁止しているが、現場のことまではチェックできない。チェックするにはコストがかかる。」という内容でした。
それをするのが企業の義務だと思うのですが…。
そのコストというのが想像以上に低かったことも驚きで、たしか商品につき1セント上乗せすることになるというような…1セントのために?消費者としては1セント高くてもフェアな物を買いたいし、広告に莫大な費用をかけられるのだったら、やろうと思えばすぐにでもできるのでは?!お願いだからやってほしい!と思わずにはいられませんでした。

悲しいというか残念というか…この番組の内容はかなりショックなものでした。
食に携わる者としてもいろいろと考えさせられました。

じつは、これには後日談があります。
2012年、A社は「第三者機関による調査の結果、A社と契約しているカカオ農家が子どもを働かせたり大人に労働を強制したりする実態が明らかになったことを受けて、カカオ豆の生産農家から、2020年までに児童労働や強制労働を一掃させる」と宣言したのです。

チョコレートの世界大手が児童問題について明確な目標を打ち出したのは、A社が初めてだそうです。
良かった…と思うと同時に、第三者による調査で問題が明るみに出なければ、ずっと状況は変わらなかったかもしれないと思うと恐ろしくもあり、「第三者」の重要性を強く感じました。
「第三者」は、「消費者」でもあります。
私たちが消費者として公正な商品を望むことが、企業の公正さに繋がるということをひしひしと感じました。

チョコレートの原料となるカカオ豆の多くは、途上国と呼ばれる貧しい国で栽培されています。
多くの農場で強制労働や児童労働が行われ、西アフリカのコートジボワールだけでも推定20万人の子どもがカカオのプランテーションで働かされているといいます。
その多くがチョコレートがどんなものかも知らないままに…。

ありがたいことに、ドイツではビオやフェアトレード商品が充実していて、手頃な価格で手に入ります。
それだけフェアな商品が求められている、需要が高いということでしょう。
環境や公正さに対する人々の意識も高いように感じます。
テレビ番組にしても、先ほどのチェック番組のように、問題を提起するようなドキュメンタリーや、考えるきっかけをくれるような社会派の番組は豊富で、店や商品を紹介するだけの、いわゆる情報番組は見当たりません。

日本の状況をみてみると、近年になって徐々に「フェアトレード」の認知度が高まってきてはいるものの、その市場は、世界の先進国の中では桁違いに小さいもの。
日本はフェアトレードの考えが広まりにくい、と言われているそうです。
購買力はあるのに(一粒500円のチョコレートが飛ぶように売れる国なんて他にないと思います)なぜだろう…とこの状況がもどかしくもありますが、日本人は商品に対する興味も知識も半端じゃないし、何より公正に判断できる目を持っているはずなので、もっと認知度が高まれば、状況が激変する可能性はあると思うのです。
期待もこめて。。。

日本でも、たくさんの団体や個人で尽力しておられる方たちがいます。
私も陰ながら応援しつつ、いち消費者としての「責任」を考えていきたいと思います。

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フェアトレード・ラベル・ジャパン
フェアトレードについては、こちらのサイトで詳しく正しく知ることができます。
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by pudding-world | 2013-01-26 02:35 | ニカラグア